天気とリウマチ


疑問点
 ★患者は天気が悪いとリウマチが悪い、寒いと悪いと訴えることが多い。
  気候とリウマチの症状は、本当に関係があるのか?

1.天気と症状ににつながりのある患者の頻度は
表 リウマチと気象感受性の頻度
Hill DF
1972
80〜90%
Sibley JT
1985
65.7%
Dequeker J
1986
69.0%
Guedj D
1990
25.0%
三木
1958
75.5%
1975
83.6%
延永
1985
63.0%
中園
1996
74.2%

2.気候とリウマチ症状と関係のある証拠はあるのか?
Edstrom:
"microclimate"という温度(32℃)、湿度35%の部屋にリウマチ患者を3ヶ月生活させたところ、疼痛・こわばり・腫脹の軽減と咽頭培養菌の減少が認められた。元の環境に戻ると元に戻った。
中園:
天気の影響ある群とない群で心理テスト優位差なし
自立神経失調症傾向あり、天気が自律神経に影響している可能性。

☆否定的文献
van de Laar:
79名のRA患者で2週間毎に3回検診(朝のこわばり、VAS、疼痛間接数、腫脹関節数、握力、30feet 歩行時間、血沈、CRP、血小板)を行い、気象状況との関連を調査した。有意なものはなかった。
Gorin:
75名のRA患者に日記をつけさせてVAS、AIMSと気象記録で調査。気象感受性がある群では寒い日、日照時間の短い日、湿度の変化する時、高気圧の後の日に痛みが強かったが、pain scoreの幅は少なく、臨床的意味はあまりなかった。

3.気候の要素のうち何がリウマチの症状と関係しているか?
(温度・湿度・気圧・風・電離・太陽放射・ガスや粒子・スモッグなど)
Hill:
"Climatron":温度・湿度・気圧・風・電離の5つの因子を変化させることができる。15feetの四角い部屋でリウマチ患者を生活させ、症状をLansbury指数で評価した。(患者には変化は知らされない)
温度の上昇と気圧の下降の組み合わせのときだけリウマチの症状が悪化した。変化後、安定すれば症状も安定した。

4.なぜ気候でリウマチの症状が変化するのか?
Hillの仮説:
"Climatron"での追試で、湿度上昇と気圧低下のときに利尿がおこる。
→正常組織では、低気圧に対して細胞内の水分を血流へ押し出すことで調節しているが、病的な細胞は透過性が悪いため水分を貯留し、細胞内圧があがる。この圧の勾配が疼痛を増し、組織の腫脹をきたす。
行山:
正常者で急激な気象変化の際、尿中カテコールアミン、セトロニン、コーチゾンなどが増えるのは、適応するための内的変動の結果。リウマチ患者では慢性的関節のストレス状態で適応に関する系がフルに働いているため、適応の余力が少ないことが症状の悪化をもたらす。

参考文献
Hill D.F.:Climate and Arthritis ed by JL Hollander,Arthritis and Allied Conditions,Chapter 34,Lea and Febiger,7thed 1966: 587-596.
Gorin A.A, et al:Rheumatoid arthritis patients show weather sensitivity in daily life,but the relationship is not clinically significant.Pain, 1999,81,173-177.
van der Laar MAJ et al:Assessment of Inflammatory Joint Activity in Rheumatoid Arthritis and Changes in Atmospheric Conditions Clin Rheumatol 1991;10:426-433
Drane D et al:The Association between External Weather Conditions and Pain and Stiffness in Women with Rheumatoid Arthritis.J Rheumatol,1997;24:1309-1316
EdstrÖm G et al:Investigations into the effect of hot,dry microclimate on peripheral circulation etc in arthritic patients Ann Dis, 1948;7:76-82
Guedj D et al:Effect of weather conditions on rheumatic patients. Ann Rheum Dis,1990;49:158-159
Sibley JT:Weather and arthritis symptoms:J Rheumatol,1985;12:707-710
Dequeker J et al:The effect of biometeorological factors on Ritchie articular index and pain in rheumatoid arthritis.Scand J Rheum, 1986;15:280-284
東 威:リウマチと温泉気候物理医学 日温気物医誌 59:3-5,1995
滝沢健司 他:慢性関節リウマチと環境因子の関係―日本各地における悪化の訴え率の季節変動について― 公衆衛生 55:887-889 1991
中園清 他:RA患者の天候について―心理的側面について―中部リウマチ 28:119-120,1997
延永正:リウマチ性疾患と気象・季節 からだの科学 123:75-80,1985
 
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